サイゴンに住み始めて・・・5年目の月日が過ぎる。
この数年、街の姿が日々刻々と変化していく。
ベトナムは過去にいろいろな文化の影響を受けており、歴史と共にあった建物等が今、次々と取り壊され、雨後の筍のごとく無機質な建物が増えていく。
急激な経済の成長をみせるベトナムの中で、こと、サイゴンの変化には目を見張るものがある。
まさかと思っていた我が家にも近代化の波がおし寄せてきた。
豊かな実りをつける果樹がある中庭つきマイホームも取り壊すとの通告。
昨今の土地価値高騰に伴って、この家も9階建てのアパートに建て替えるとの事。庭先の、時に畏敬の念さえ抱かせた樹齢100余年のブーゲンビリアの大木も切り倒される。
確実に国が豊かになり始め、それに伴い開発の波が訪れるのはしごく当然の流れであろう。
実際、エアコンの効いたピカピカのビルに一歩踏み入れると、焼き付けるような太陽からホッと一息つく近代化の恩恵に甘んずる自分もいるのだ。
やがて、この国も近代化開発という津波にのみこまれてしまうのか・・・
今回の私の作品群は「Lost in Progress」と題して近代化、発展の過程で失われていくもの、迷子になってしまった感情などへの思いを表現した。
October 2004
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