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●作品コンセプト

いろいろな風景、静物、そして人物との出会いからいろいろな感動を覚える。そんな感動を自身の心の奥に刻み、それを還元し、キャンヴァスに刻み付ける。いわゆる「書」のような空間を求め、筆をとる。　筆をとるまでの自身の生き方、または感じ方をすべてこの一筆に込める。「書」は、一瞬の緊迫した間と息遣いで決まる。時間もその一瞬でつなぎとめられる。しかし油彩は、もっと長い時間をそこに凝縮させ、つなぎとめることができる。そしてまた平面で2次元のものだが、「彫塑」を創作する感覚と似ている。表面をリアルに追っていくようなところではどうしても本質は表現できず、その積み上げの過程さえも勇気を持って壊すことのできるような冒険ももちろん必要だと考える。盛ったり削ぎ落としたりするなかで、その本質は少しずつ形になっていく。もちろん制作しているときの感覚は、自然の摂理に任せ没頭するが、一度それを引き離し、客観的に眺める時間もまた不可欠でそして筆をおくタイミングは、一番スリリングであり、困難を要する。
視覚的 および物質的要素と、身体的 心理的要素との一致を『平面』というスペース空間といった、いわば物質的制限のあるなかでの心象表現の可能性の追究、およびその行為の蓄積と普遍性。足したり引いたりされていく形や線、色面・フォルムは、時間とともに構築された自身の哲学性や五感などのすべてを含有し、また、それらは作品そのものにもフラクタルに映し出される。追究していく過程のなか、構築性を伴い「啓示」が生まれる。強い響きとゆるがない構築性は、作品と自身との呼応より呼び起こされる。またそれは個人的心理的部分（＝min：ひとりの人間としての心）とさまざまな生命や宇宙などのような、自身を含むすべての大自然（＝max：空や海、時間と生命・・・それらすべてを含む大きなもの）とが、その追究のなかで少しずつ同調していく。深く、すばらしいそれらをキャンヴァスに還元させる行為、立ち向かう自身の姿勢、それそのものが一番重要であるかもしれないと考える。

２００３.１２

安堵感と構築性、いとおしいものに対してそこに含まれる叙情感…そんなものを絵具とともにまみれ、形象を引き出し、画面につなぎとめてきた。が、自身の等身大としたいその相手が故、それだけではなかなか一向に先へと進めないところもある。過去に生きているわけでなく、今という常に流動的な毎日のなかで呼吸し、生きている。自身の「アク」みたいなものも、やはり出てくるであろうし、生理的な部分もそこに含有されしものである。「理想形」としての表現では、リアリティーも希薄になる。安堵、沈着というよりも「興奮」、画面から自然に飛び出してくるような「アンバランスさ」、どうしようもなく心が動く色彩や形態、線をふんだんに用いて、正直にさらけだしていきたいと更に思うようになった。

２００５.１