先浜恵理子 写真展 手のひらのいのち
2008年11月7日(Fri) - 11月28日(Fri) 10:00−18:00(最終日17:00まで) 入場無料 ※日曜祝日休館
ビジュアルアーツギャラリー・東京 新宿区西早稲田3-14-3早稲田安達ビル1F Tel:03-3221-0206(東京ビジュアルアーツ写真学科) E-mail:vagt@star.odn.ne.jp URL:http://photalk.web.fc2.com/prof/sakihama.html/
夏に誕生する予定だった娘が、桜の舞い散る季節に誕生してからおよそ半年が経過しました。
「早いもので」と書きたいところですが、正直私にとってはとても長く感じた、濃密な時間でありました。今この胸に毎日彼女を抱きながら、何だか目の前の平和な状況がまだ信じられないような気分です。出産して数時間後、彼女の入った保育器の中を覗く時、足がすくみ震えました。自分が何か悪い事をしてしまったような気がして、現実から逃げ出したい気分になりました。
744gの赤ちゃん。
彼女を見るのがこわくてこわくて、一緒に未熟児室に入った母親の手を強く握りしめながら一歩一歩その保育器に近づいて行ったことを今でも覚えています。おびえる私とは対照的に、目の前の彼女はしっかりとそして逞しく「生きて」いました。両手のひらにすっぽりとおさまる小さな体で細い手足を動かしながら、一生懸命生きていました。
その日から、毎日写真を撮りました。
彼女の小さな成長を少しでも見逃すまいと、母親である自分が彼女の成長をこの目で見るんだという気持ちで記録しました。
逃げないで、彼女としっかり向き合っていくために。
5ヶ月間の入院生活を経て、今では授乳におむつ替えに沐浴にとようやく出産後のお母さんたちがかかえる嬉しい悲鳴を私も体験できるようになり、彼女の写真をゆっくりと眺める暇もないまま驚くほどのスピードで時間が過ぎていこうとしています。コンパクトカメラで撮影した「記録写真」が、果たして写真展というかたちで皆様に見てもらうものに完成できるかという不安材料はたくさんありましたが、この約半年間の彼女の「生命の記録」をかたちにすることで何か提示できるものがあるのではないかと、多くの方々のお力添えのもと写真展を催すはこびになりました。
さまざまなリスクをおいながらも小さな体で誕生した彼女をたくさんの人の「手」が救ってくれました。手のひらに隠れてしまうほどだった小さないのちが、今では腕に抱えられるほどの大きないのちになりました。
この写真展を機に、娘がまた私をさまざまな人に出会わせてくれようとしています。 彼女の誕生に、日々感謝です。